【Column】自分の身体と向き合うブログ
痛みが治まったらプレーする。また痛くなって休む。この繰り返しで本当に大丈夫?
「痛みがなくなったから、練習に復帰した」
「プレーしていたら、また同じ場所が痛くなった」
「しばらく休んだら痛みが治まったので、もう一度プレーを始めた」
スポーツを頑張る選手の中には、このような繰り返しに悩んでいる方がいます。
特に、試合に出たい、レギュラーを取りたい、チームの仲間に遅れたくないという気持ちが強い選手ほど、少しくらい痛くてもプレーを続けたいと思うかもしれません。
また、痛み止めを使ったり、テーピングやサポーターなどで痛みを軽減したりしながら、何とか練習や試合に参加している選手もいるでしょう。
もちろん、痛みがある選手が全員、無理をしているわけではありません。適宜、必要な治療やサポートを受けながら競技を続けているケースもあります。
しかし、ここで一度考えてほしいことがあります。
痛みが治まるたびにプレーを再開し、また痛くなって休む。その繰り返しを続けることは、本当に良いことなのでしょうか?
1.痛みが治まると、プレーできる状態に戻ったと思ってしまう
痛みがあるときは、走ることも、跳ぶことも、ボールを蹴ることもつらく感じます。
ところが、練習を休んだり、治療を受けたりすることで、痛みが軽くなることがあります。
普段どおりに歩ける。階段を上り下りできる。身体を動かしても痛くない。
こうなると、「もう治った」「これならプレーできる」と考えるのは自然なことです。
痛みがなくなったことは、身体の状態が良い方向に変化している可能性を示す大切なサインです。
しかし、痛みがなくなったことだけで、ケガをした組織が十分に回復しているか、競技に必要な筋力や動作が戻っているかまでは判断できません。
例えば、普段の生活では問題がなくても、全力で走る、急に方向を変える、ジャンプする、繰り返し投球するといった動作では、身体に大きな負荷がかかります。
その負荷に耐えられる状態まで回復していなければ、プレーを再開したことで再び痛みが出る場合があります。
つまり、日常生活で痛くないことと、スポーツを全力で行えることは、必ずしも同じではないのです。
2.痛みが治まるとプレーし、また痛くなって休む。この繰り返しが起こる理由
痛みが治まるとプレーを再開し、また痛くなると休む。
このような経過をたどる背景には、いくつかの可能性があります。
① 痛みが軽くなっても、十分に回復していない
ケガの種類や程度によっては、痛みが軽減したあとも、組織の修復や身体の機能の回復に時間が必要です。
痛みがなくなったことだけを目安に競技へ復帰すると、回復途中の身体に再び大きな負荷をかけてしまうことがあります。
特に、骨や腱、靱帯などの損傷では、痛みの程度だけで復帰の時期を判断することはできません。
② 休んでいる間に痛みが軽くなっても、負荷への対応力が十分に戻っていない
運動を休むことで、身体にかかる負荷が減り、症状が落ち着くことがあります。
しかし、休んでいる間に筋力や持久力が低下したり、競技に必要な動作への準備が十分に整っていなかったりする場合もあります。
その状態で、いきなり以前と同じ練習量や強度に戻せば、身体への負担が大きくなる可能性があります。
③ 痛みが出た背景が十分に確認されていない
スポーツによる痛みには、組織の損傷、繰り返しの負荷、練習量の急な増加、休養不足など、さまざまな要因が関係することがあります。
そのため、痛みが落ち着いたとしても、何が起きていたのか、どの程度まで回復しているのかを確認しないまま競技を再開すると、同じような症状を繰り返すことがあります。
ただし、身体の使い方や柔軟性だけが原因とは限りません。痛みを繰り返す場合は、ケガの種類や組織の状態も含めて評価することが大切です。
3.痛み止めを使えばプレーできる。それは本当に良いこと?
試合が近いときや、大切な大会を控えているとき。
「少し痛いけれど、痛み止めを飲めばプレーできる」
このように考えたことがある選手や保護者もいるかもしれません。
痛み止めは、痛みや炎症などの症状を軽減するために使用される薬です。適切な診断や治療のもとで使用することには意味があります。
しかし、ここで理解しておきたいことがあります。
痛み止めによって痛みが軽くなったとしても、それだけでケガが治ったことにはなりません。
例えば、ケガをした足が痛くて走れなかった選手が、薬を使って痛みを感じにくくなったとします。
その結果、走れるようになったとしても、損傷した組織が十分に回復しているとは限りません。
痛みが軽くなったことで、身体が出している警告に気づきにくくなり、必要以上に負荷をかけてしまう可能性もあります。
また、痛み止めには種類ごとに副作用や使用上の注意があります。薬によっては胃腸や腎臓などへの影響があり、脱水や体調不良が重なる状況では、特に注意が必要なものもあります。
自己判断で薬を使ってプレーを続けるのではなく、医師や薬剤師に相談し、使用方法や競技への参加について確認することが大切です。
痛み止めを使うこと自体が悪いのではありません。
痛みを抑えることだけを目的にして、回復状態を確認しないままプレーを続けることが問題ということです。
4.テーピングやサポーターで痛みを抑えれば大丈夫?
痛みがある部位にテーピングをしたり、サポーターを装着したりすることもあります。
これらは、目的や使用方法が適切であれば、関節の保護や安定性の補助などに役立つことがあります。
ケガの状態によっては、医療従事者などの指導のもとで、競技復帰の過程に使用することもあります。
ただし、テーピングやサポーターを使っているからといって、すべてのケガに安全に対応できるわけではありません。
例えば、足首を捻挫した選手がサポーターを装着して痛みを感じにくくなったとしても、靱帯の損傷や筋力、バランス能力などが十分に回復しているとは限りません。
また、痛みを軽減するために使っている道具が、実際にはどのような役割を果たしているのかを理解することも大切です。
関節を保護するために使用しているのか。動きを補助するためなのか。それとも、痛みを感じにくくしてプレーを続けるためなのか。
目的によって考え方は変わります。
道具を使ってプレーできることと、そのプレーが身体にとって適切であることは、別の問題です。
痛みが続いている場合や、道具がないとプレーできない場合には、その状態で競技を続けてよいのか、専門家に確認することをおすすめします。
5.痛みを我慢してプレーすることは、努力や根性なのでしょうか?
スポーツの世界では、「多少の痛みは我慢する」「試合に出るために頑張る」といった考え方が見られることがあります。
もちろん、スポーツには苦しさを乗り越える場面があります。
しかし、練習による疲労や一時的な筋肉の張りと、ケガによる痛みは同じではありません。
痛みの原因が分からないまま我慢を続けたり、薬や道具で痛みを抑えながら無理にプレーしたりすることが、必ずしも選手の成長につながるとは限りません。
むしろ、状態によってはケガを悪化させたり、競技復帰までにより長い時間が必要になったりする可能性があります。
本当に大切なのは、痛みを我慢できる選手になることではありません。
自分の身体の変化に気づき、必要なときには休み、適切な評価やサポートを受け、回復に必要なことに取り組める選手になることです。
休むことは、必ずしも後退ではありません。
今の身体の状態を把握し、将来も競技を続けられるように準備することも、スポーツに真剣に取り組むうえで大切な行動です。
6.大切なのは、痛みをなくすことだけでなく、痛みを繰り返さないための準備をすること
では、痛みが治まったあと、どのように行動すればよいのでしょうか。
まず大切なのは、痛みが出た原因やケガの状態を確認することです。
痛みを繰り返している場合には、単に休むことを繰り返すだけでなく、必要に応じて医療機関で診断や評価を受けることが重要です。
そのうえで、ケガの種類や回復状況に応じて、次のようなことに取り組みます。
- 関節の動きや柔軟性の確認
- 筋力やバランス能力の回復
- 競技に必要な動作の確認
- 練習量や運動強度の段階的な調整
- 休養や睡眠など、回復を支える生活習慣の見直し
- 必要に応じたセルフケアやトレーニングの実践
これらは、すべての選手に同じ方法が必要というわけではありません。
ケガの種類や程度、競技特性、選手の成長段階などによって、必要な取り組みは変わります。
大切なのは、痛みがなくなったことだけで競技復帰を決めるのではなく、身体が必要な負荷に対応できる状態かどうかを確認しながら、段階的にプレーへ戻っていくことです。
そして、身体の状態を自分自身でも理解し、日頃からケアやコンディショニングに取り組めるようになることが、長くスポーツを続けるための土台になります。
7.ジュニアアスリートに知ってほしいこと
成長期の選手にとって、スポーツは技術や体力を伸ばすだけでなく、仲間との関係や目標に向かって努力する経験を得られる大切な場です。
だからこそ、ケガによって練習や試合に参加できなくなることは、選手本人にとって大きな悩みになることがあります。
「休んだらレギュラーを取られてしまうかもしれない」
「試合に出られなくなるのが嫌だ」
「チームに迷惑をかけたくない」
そうした気持ちから、痛みを隠してしまう選手もいるかもしれません。
そのため、周囲の大人が痛みの有無だけで選手を判断せず、安心して身体の状態を相談できる環境をつくることも大切です。
痛みがあることを伝えたら怒られる。休んだら努力が足りないと思われる。
そのような環境では、選手は無理をしてしまうかもしれません。
選手本人が身体の状態を伝えられること。そして、指導者や保護者がその声を受け止め、必要な対応につなげられること。
こうした関わりが、選手の健康を守り、長期的な成長を支えることにつながります。
まとめ|痛みが治まったらプレーする。その繰り返しから抜け出すために
痛みが治まったらプレーする。
また痛くなったら休む。
そして、痛みが治まったら再びプレーする。
この繰り返しに悩んでいる選手は、決して少なくありません。
痛みがなくなれば、治ったと思うのは自然なことです。また、試合に出たい、練習を休みたくないという気持ちも理解できます。
しかし、痛み止めやテーピング、サポーターなどで痛みを軽減できたとしても、それだけでケガが回復したとは限りません。
これらの方法が必要な場面もありますが、痛みを抑えることだけを目的にして、身体の状態を確認しないままプレーを続けることには注意が必要です。
大切なのは、痛みをなくすことだけを目標にするのではなく、なぜ痛みが出たのか、身体はどこまで回復しているのか、競技に戻るために何が必要なのかを考えることです。
痛みがなくなったからプレーするのではなく、プレーできる身体の状態まで回復しているかを確認する。
この視点を持つことが、痛みを繰り返す状態から抜け出し、長くスポーツを続けていくための大切な一歩になります。
同じ場所の痛みを繰り返している選手や、痛み止めなどを使わなければプレーが難しい選手は、無理に競技を続けず、医療機関などの専門家に相談しましょう。
ケガをした経験を、これからの身体づくりにつなげていく。そのために、痛みが治まったあとに何をするかを、一度考えてみてはいかがでしょうか。












